Webを中心にインターネットトラフィックは年々増加を続けています。リクエストに対してレスポンスを返すという根本的な構造は同じでも、静的なコンテンツを送信するのではなく、リクエストのたびにダイナミックにコンテンツを生成したり、多数のセッションを張ってステータスに応じたコンテンツを返すといった具合に、リソースの消費は増す一方です。
この兆候が現れ始めたのは、もはや死語の部類に入るかもしれませんが「Web 2.0」が流行り始めた頃からでしょう。その後、Google Mapに代表されるWebサービスやSaaSが普及した結果、トラフィック増加のトレンドはとどまるところを知りません。
ゼットスケーラーでは継続的にトラフィックを計測していますが、この数年で、トラフィック量は数百倍というレベルで増加しています。私たちはこの増加に追いつくべく、データセンターの増強などを進めていますが、どういった要因でこれほどトラフィックが増えているか、それによってどんな課題が生じているかを説明したいと思います。
増加を続けるインターネットトラフィック、後押ししたのは動画よりも……
トラフィックを食いつぶすコンテンツといえば、モバイル通信で「ギガが足りない」原因としてしばしば挙げられる動画が思い浮かぶでしょう。
けれどゼットスケーラーが見るところ、原因はそれだけではありません。確かにインターネットトラフィックに占めるYouTubeなどの動画の割合は少なくありませんが、この2〜3年で見ると断然増えているのは、Microsoft 365(旧Office 365)を含むSaaSアプリケーションのトラフィックです。一般のユーザーが家庭で使うトラフィックよりも、業務系のトラフィックが増えてきているのです。
ゼットスケーラーが取得したデータから確認できたことは、Webトラフィックのうち多いのは、Microsoft 365やOutlookといった業務用のSaaSアプリケーションで、FacebookなどのSNS系トラフィックも増えています。特に目立つのはMicrosoft 365のトラフィックでこの2年ほどで約10倍も伸びており、1日あたり1億トランザクションに達しています。これはグローバルの数字ですが、日本国内に限ってみてもほぼ同様の傾向が見られます。
この傾向をさらに加速させているのが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症対策として広がったテレワークへの切り替えです。全世界でゼットスケーラーのZPAが処理するトラフィックは、1月に比べて8倍も増加しました。もっとも顕著に増えたのは中国でなんと12倍ですし、韓国のトラフィックも6倍に上っています。日本での増加は2倍ですが、通信インフラにとって「倍」というのは大変なことです。
想定外のトラフィック増加で露呈した、既存アーキテクチャの限界
悩ましいのは、この想定外のトラフィック増加が、テレワーク環境に思わぬ問題を引き起こしていることです。
これまでは社内の業務アプリケーションはもちろん、SaaSアプリケーションについても、いったんオンプレミスに導入したVPNアプライアンスを経由してアクセスするネットワーク構成がほとんどでした。しかし、そのキャパシティ設計は、全従業員の3〜4割がリモートアクセスする程度で想定されていました。新型コロナという想像もできなかった事態によって、キャパシティの問題が浮上し、問い合わせが殺到しています。
つまり、従業員の感染防止を目的にテレワークを導入したのはいいけれど、いざアプリにアクセスして仕事をしようと思っても大きなレイテンシが生じたり、思ったよりもパフォーマンスが出ないという声が、あちこちから聞こえています。IT管理者はただでさえテレワーク環境の整備に奔走しているのに、「重たくて使い物にならない」という従業員からの苦情にさらされ、踏んだり蹴ったりです。
ならば、VPNアプライアンスを増強すれば問題は解決するかというと、話はそう簡単にはいきません。ベンダーには問い合わせが殺到しており、急いでハードウェアを調達したくでも難しい状況です。また、いざ機器が届いてもさまざまな設定が必要になります。あれやこれと調整しているうちに、緊急事態宣言が解除され、結局過剰投資になってしまった、なんてことになりかねません。しかもこの先、新型コロナウイルスの第二波、第三波が来ないとは限りません。その度にドタバタを繰り返すのはナンセンスです。
いつかくるその日のために備えておくことが重要ですが、無駄な投資は極力避けたいもの。こう考えていくと、やはりオンプレミスに機器を導入するより、クラウドという選択肢に軍配が上がります。急な需要の高まりにもスケールアップして柔軟に拡張できるクラウドならではの利点を、あらためて感じた方は多いでしょう。
中でもゼットスケーラーでは、独自のクラウドネイティブなアーキテクチャによってOffice 365をはじめとするSaaSアプリケーションへのアクセスを最適化しています。この結果、オンプレミスのVPN経由でアクセスする場合よりも43%高速に、しかもセキュリティを担保しながらアクセスできる環境を実現しています。
新型コロナウイルスの拡大は、図らずも生活のあり方や働き方に大きなインパクトをもたらしました。そして、これからの新しい働き方に合致した、セキュリティとパフォーマンスを両立できるクラウドアーキテクチャの重要性も、あぶりだしたと言えるでしょう。
ゼットスケーラーのクラウドアーキテクチャの詳細については、こちらのページをご覧ください。
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